でこママ様、(1回目)
ちょっと長くなりそうなので、何回かに分けてアドバイスさせて下さい。
1から9までの質問事項について、全てYesではなかったので少しほっとしています。
1.知能と知的関心は高く調べること考えることが好き
これについては、お母様は否定的ですが、対象を学校の勉強ではなく自分の興味のある事という風に考えると、例えば、星座や、小説書きとかイラスト描きのように、調べること、考えることがお好きなのではないでしょうか。これは、Yesでカウントしていいように思いますが、一応、「どちらとも言えない」にしておきましょう。余談ですが、機会がありましたら、WISCなど知能テストは受けさせておいた方がいいと思います。
2.大人など自分の内的世界に入ってこられない人との会話は比較的楽に出来る
これは完全にYesですね。
3.何か問題に直面すると自分独りで解決することを好み、人との相談を嫌がる
これもYesでいいようですが、これも一応、「どちらとも言えない」にしておきましょう。
4.自分がやっていること計画していることについては、時間をかけて綿密に事を進める傾向がある
5.集中力があり、時間を忘れて没頭しているときが多い
6.人と親しくなろうとしたら近づいて話しかけるなど努力しなければならないことは分かっているが、それをしようとはしない。事実上出来ないのに「しようと思えば出来るのだけれど、自分はするつもりがない」と考える傾向がある。
この3点は、完全にYesで、疑問の余地はなさそうですね。
7.スポーツや体育など体を使うことは苦手
これは完全にNoで、良かったです。
8.自分が興味があって勉強したことなどについては、自分に対するはっきりとした信頼がある(自信がある)。
これはYesで、いいですね。
9.人との関わりを避けるために、自分自身のニーズ(やりたいこと、欲しいもの)を最小限にしようとしているように見える(欲しがらず我慢強い)。
これについては、
>どちらかというとイエスだと思います。
とのことですのでYesに近いようですが、これも「どちらとも言えない」にしておきましょう。
こうして見てくると、Noが1つ、どちらとも言えないが3つ、Yesが5つ、ということだろうと思います。
でこママ様、(2回目)
不登校や引きこもりになりやすいタイプと言うのがあるとすると、お嬢様はそのタイプにとても近い性格をお持ちだと思います。
誰も実数を調べたことがないのですから、あくまで私の感覚的な判断に過ぎませんが、私自身、自分の経験の中で、特に引きこもってしまうお子さんにこのタイプが多いように感じて来ました。
このタイプは私のような立場の人間とも比較的楽に話はするものの、それでは「引きこもり」という問題の解決に向けて実際にカウンセリングを受けに来ないか、と言う段になると、言を左右にして直面している問題に向き合おうとしない人が圧倒的に多いのです。
実際、カウンセリンまで持ち込めたお子さんは、私の長い経験の中で少数にしか過ぎません。
でこママ様は、
>私の感じる限り、不登校でも勉強はちゃんとしていると思われたいのではないかと思います
>「自分はたとえ教室に行かなくても、学校には行っている」と思いたいため、無理して相談室に行っているのではないかと私は感じています
とコメントされていますね。
このような心理的な観察が出来るお母様は稀ですし、だからこそ、このような洞察力をお持ちであればきっと私の言わんとするところも正確に理解していただけると思いますので、正直に私の考えをお伝えするべきなのだと思います。
でこママ様、
このタイプのお子さんがいったん不登校になると、学校復帰というのはかなり難しいです。
というのは、お母様がしっかり見ていらっしゃる通り、「不登校でも勉強はしている」、「不登校でも学校には行っている」という形で、問題の本質をすり替えてしまうのです。「学校に行けないという対人関係の問題を解決しよう、乗り越えよう」という取り組みがどうしても難しいのです。
何故かというと、このように取り組もうとすると、「こんな自分ではいけない」という地点、つまり厳しい「自己否定」の地点を通らなければならないので、どうしてもそこまで行き着くことが出来ないのです。
かと言って、彼女の現実を指摘し続けて自己否定させようとすると、大変に危険です。ストレスが蓄積し緊張が極度に高まって、まるでヒステリーのような状態になり得ますし、自殺を試みたりする場合があり得るのです。
でこママ様、(3回目)
まず何よりも良かったのは、小5からの不登校について、ご家庭で極めて適切な対処ができたことです。良かったですね。彼女が今、時々にせよ、学校や場合によって教室にも顔を出せるのは、お父さまお母さまの向き合い方が良かったからに他なりません。時々登校できるのがいいのではなく、彼女の不登校状態を現状でとどめられたのが本当に良かったと思います。
それから私には大きな救いに思えるのが、彼女が運動能力に恵まれていることです。この性格タイプはほとんど運動が苦手で、それ故に運動嫌いですから、普通、体のエネルギーを使うことでこころの健全性を保つと言うことがひどく難しいのです。
この点、お嬢様は運動によってこころの活力を高めることが出来るわけで、彼女が今さしてストレスを蓄積させていないとすれば、彼女の運動好きに依るところが大きいと思います。
そして、何より、運動が好きだと言うことは、このタイプの性格的特質の全体を和らげている可能性があります。前述の質問で「どちらとも言えない」に分類した1,3,9についても、このおかげで鋭角的な影響を免れているように思うのです。
さて、これからどう対処していくか、というアドバイスに移りたいと思います。
最大のポイントは、彼女を追いつめることを絶対に避けながら、人的な繋がりをいかに多く、いかに多層的に作っていくか、という点に尽きます。言い換えると、同世代の子達と付き合えるようになるのを黙って待とう、と言う態度ではダメです。同世代がダメなら年上でも年下でもいいですから、なるべく継続的な人間関係を作るように、親が糸口を探して来てはうまく付き合いを促すような働きかけがいつも必要です。
地域のスポーツクラブ、水泳教室、書道教室、お花の教室、ピアノ等音楽教室、英会話教室、などなど年齢の違う子達が習熟度で一緒にやっていくようなスポーツや習い事はないでしょうか。
継続的な人間関係を作ると言うことで家庭教師は大いにお勧めですが如何でしょう。
次に中学校ですが、次のようにしておいたら如何でしょうか。
「中学校にも無理をしてまで通う必要はない。行けるときに登校し、保健室で勉強すると言うことでいい。もし出来そうな時は教室へ行ってみればいいだろう。要するに、小学校時代と同じようにやればいい」。
関連してフリースクールについては、
「中学には最初から行けそうもない、または、行った結果もう行きたくなくなったと言う場合は、フリースクールを検討してみよう」
と付け加えたらいいと思います。
公的な「適応指導教室」等については、方針や指導に当たる教官の情報を良く集めた方がいいです。不登校児の「隔離」が実質的な目的だったり、指導教官が箸にも棒にもかからないということも少なくないように聞いています。
フリースクールの方がずっとましだとは思いますが、良くも悪くもさまざまです。これも良く話を聞いて考え方や実態を確かめたいですね。不登校というのは一律の処し方で何とかなるようなものではありませんから、指導者がどれだけ経験を積んできてどれだけ指導力に幅と深さがあるのかが大切なポイントです。
それに、どちらもお子さんが通う気にならないと話になりませんからね。
三番目に提案しておきたいのは「寮生活」です。
一種の山村留学ですが、不登校の小中学生を預かってくれる施設が全国に幾つかあります。上記の対応をしていく中で彼女の気持ちが前向きに動くようであれば、この手の施設での「共同生活」はプラスに働く可能性が大きいです。見違えるように対人関係能力が良くなったと言う例を何件か知っています。
でこママ様、(4回目)
最後に、高校大学へ向けた考え方に触れておきます。
過去、私のところにかろうじて通って来たこのタイプの子供は2名とも大検を経て大学に進みました。二人とも高校は続かなかったのです。一人はもう社会に出ていますが活躍していると言うより、やはり、転職をくり返しながら頑張っていると言う感じです。ニートではないですが、フリーターになりかねない状況で苦しんでいると言った方が正確でしょうか。もう一人は、まだ大学生で、ゼミでの濃密な人間関係(教官と学生、学生同士)にこれも苦しんでいます。
それでも一人は大学は楽しかったと明言しますし、もう一人も今は苦しみながら「高校時代よりずっとましだ」と言います。何より、口幅ったいですが、私との関わりがもしなければ二人とも引きこもりになっていたに違いない事を考えれば、上に書いたような方法で人間関係を繋ぎながら大学を目指すと言うのは、極めて有効な対処策だと思えるのです。
言葉を代えれば、一般に、高校時代までは多分に引きずっている人間の幼児性が、大学に入る頃からようやく抜けて来るのですが、このタイプはそうなると何とか大学生活には適応できるのだと私は思っています。小中高はダメでも大学は登校できるということだと思っています。そして大学に適応できればこそ、社会生活も可能になるのだと思うのです。
でこママ様、
親としては険しい山の稜線を行くような子育てになりますが、頑張って下さい。
この性格タイプがそれ自体で「人間関係病」だと言うわけではないのです。多種多様で重層的な人間関係の環境のなかで、諦めずに人との絆を少しづつ養っていけば、この性格タイプでも、長期的には不登校を克服することは可能なのです。
何とか参考にしていただけるアドバイスになったような気がしていますが、何か分かりづらい点等ありましたら、また聞いて下さい。
いつも心から応援しています。